この記事で学ぶこと
3つのポイント:
1. サ行の「し」は S の音ではない — 舌が硬口蓋に近づく別の音 [ɕ]
2. タ行の「ち」[tɕ] と「つ」[ts] は T ではなく破擦音
3. ハ行の「ふ」[ɸ] は両唇摩擦音、「ひ」[ç] は硬口蓋摩擦音
📖 この記事の内容
- 嘘その1:サ行 — 「し」はSの音じゃない
- 嘘その2:タ行 — 「ち」も「つ」もTの音じゃない
- 嘘その3:ハ行 — 「ひ」も「ふ」もHの音じゃない
- まとめテーブル
- 練習シート
はじめに
皆さん、ちょっと想像してください。日本語を勉強し始めました。教科書を開いたら、五十音表があります。きれいに50音が並んでいます。
さ、し、す、せ、そ。…あれ?「し」だけ違いませんか?
それが最初のヒントです。五十音表は「嘘」を隠しています。ローマ字は日本語を簡単に見せます。でも本当は、同じ行なのにルールを破る音があります。
今日は、五十音表に隠された3つの嘘を明らかにします。これを知ったら、日本語の音が全く違って聞こえますよ。
反乱を起こしているのは「イ段」です。子音が母音 /i/ と組み合わさると、舌が硬口蓋に移動して、音が変わります。
① 嘘その1:サ行「し」はSの音じゃない
コンセプト
サ行を見てください:さ(sa)、し(shi)、す(su)、せ(se)、そ(so)。
4つは [s] を使います。舌の先が歯茂の後ろ(歯茂)の近くにあります。でも「し」は反乱者です。母音 /i/ がつくと、舌が後ろに移動して硬口蓋に近づきます。音が完全に変わります。
イメージしてください:Sは口の天井の前のほう。「し」はもっと後ろです。
例
すし [sɯɕi]
1つの単語に、2つの違う子音があります。「す」は [s]、「し」は [ɕ]。知らないうちに舌の位置を変えています。
しんかんせん
「し」と「せん」は同じサ行なのに、子音が全く違います:[ɕ] vs [s]。
おさしみ
「さ」[sa] vs「し」[ɕi] — 並ぶと、舌の移動が感じられます。
英語・スペイン語との比較
- 英語 "see" = 舌が前 = [s](歯茂)
- 英語 "she" = 舌がもっと後ろ = [ʃ](後部歯茂)
- 日本語「し」 = さらに後ろ = [ɕ](歯茂硬口蓋)
だから「し」は英語の "see" より "she" に近いです。ローマ字ではわかりません。
よくある間違い
間違い | 正しい | 理由 |
英語の "see" と同じ口で「し」[si] | 舌を硬口蓋に近づける [ɕi] | 「し」は歯茂の S ではない |
「さ」と「し」が同じ子音だと思う | [s] vs [ɕ] — 違う音 | 母音 /i/ が口蓋化を引き起こす |
練習(嘘その1)
問1: 「すし」という単語には、子音がいくつありますか?
問2: 「し」を発音するとき、舌はどこにありますか?
② 嘘その2:タ行「ち」も「つ」もTの音じゃない
コンセプト
タ行を見てください:た(ta)、ち(chi)、つ(tsu)、て(te)、と(to)。
「た」「て」「と」は単純な [t] です。舌が歯茂に触れて離れます。簡単です。でも「ち」と「つ」は破擦音です。
破擦音とは何でしょう?2つのステップがある音です。まず舌が空気を止めます(Tのように)。その後、きれいに離れずに、空気の摩擦が出ます(SやSHのように)。止める+摩擦が1つの瞬間に起こります。
「ち」 [tɕi] — 硬口蓋で止めます(「し」と同じ場所)。硬口蓋破擦音です。
「つ」 [tsɯ] — 歯茂で止めます(前のほう)。[s] に解放されます。歯茂破擦音です。
例
ちず(地図)[tɕizɯ]
「ち」を単純な T で発音すると、「てぃず」に聞こえます。日本人には全く違う音に聞こえます。
つなみ(津波)[tsɯnami]
英語話者はよく「sunami」と言います。英語では単語の最初に [ts] が来ないからです。[t] を落としてしまいます。
つくえ(机)[tsɯkɯe]
日常的な単語で [ts] の練習ができます。
英語・スペイン語との比較
- 「ち」 ≈ 英語の "ch"(cheese)— 似ていますが、日本語の [tɕ] はもう少し硬口蓋寄り
- 「つ」 ≈ 英語 "cats" の最後の "ts" — でも日本語では単語の最初に来る
- スペイン語でも [ts] で始まる単語はほぼない
よくある間違い
間違い | 正しい | 理由 |
「ち」を [ti] で発音 | 破擦音 [tɕi] を使う | T の口では「ち」は出ない |
「つ」を [tu] で発音 | 破擦音 [tsɯ] を使う | T の口では「つ」は出ない |
「つなみ」の [t] を落とす → "sunami" | [ts] を保つ:[tsɯnami] | [t] は破擦音の一部 |
練習(嘘その2)
問1: 学生が「地図」を [tizu] と発音しました。何が間違いでしたか?
問2: タ行の中で、破擦音はどれですか?
③ 嘘その3:ハ行「ひ」も「ふ」もHの音じゃない
コンセプト
ハ行を見てください:は(ha)、ひ(hi)、ふ(fu)、へ(he)、ほ(ho)。
「は」「へ」「ほ」は [h] を使います。のどから息が出る音(声門摩擦音)。でも「ひ」と「ふ」は全く違います。
「ふ」 [ɸɯ] — 両唇摩擦音です。両方の唇を近づけて(ロウソクを消すように)空気を通します。歯は使いません。英語の F とは違います。英語の F は上の歯で下唇を噌みます。
豆知識:「ふ」は約1,000年かけてパ行から進化しました。古い日本語では「は」は [pa] でした。[pa] → [ɸa] → [ha] と変わりました。「ふ」はその変化の生きた化石です。
「ひ」 [çi] — 硬口蓋摩擦音です。空気が硬口蓋の上を通ります(「し」や「ち」と同じ場所)。ドイツ語の "ich" の "ch" の音と同じです。
例
ふじさん(富士山)[ɸɯdʑisaɴ]
英語では "Fuji" と書いて [f] で発音します。でも日本語の「ふ」は [ɸ] です。唇だけで、歯は使いません。
ひと(人)[çito]
英語の "he" [hi] とは口の形が違います。「ひ」の舌は硬口蓋に上がります。
ふゆ(冬)[ɸɯjɯ]
両唇 [ɸ] の練習に。歯を使わないでください。
英語・スペイン語との比較
- 英語の H:のどから息が出る(日本語の「は」「へ」「ほ」と似ている)
- 英語の F:上の歯が下唇に触れる(唇歯摩擦音)— 「ふ」ではない
- スペイン語の H:無音(hoja, horno — Hは音がない)
- ドイツ語 "ich" [ç] = 日本語「ひ」と同じ
よくある間違い
間違い | 正しい | 理由 |
下唇を噌んで「ふ」(英語の F) | 両唇を近づけて、歯なし [ɸ] | 「ふ」は両唇摩擦音。Fは唇歯摩擦音 |
のどから「ひ」(英語の H) | 舌が硬口蓋に上がる [ç] | 「ひ」は硬口蓋摩擦音。Hは声門摩擦音 |
練習(嘘その3)
問1: 「ふ」を言ってみてください。下唇が上の歯に触れていますか?
問2: ドイツ語の "ich" と日本語の「ひ」は、同じ種類の子音ですか?
まとめ
嘘 | ローマ字 | 本当の音 (IPA) | 口の違い |
サ行「し」 | si / shi | [ɕi] | 舌が硬口蓋に移動 |
タ行「ち」 | chi / ti | [tɕi] | 硬口蓋破擦音(止める+摩擦) |
タ行「つ」 | tsu / tu | [tsɯ] | 歯茂破擦音(止める+摩擦) |
ハ行「ふ」 | fu / hu | [ɸɯ] | 両唇摩擦音(唇だけ、歯なし) |
ハ行「ひ」 | hi | [çi] | 硬口蓋摩擦音(硬口蓋) |
パターンが見えますか?母音 /i/ が子音と組み合わさると、舌が硬口蓋に移動します。これを口蓋化と言います。イ段が反乱を起こす原因です。
ローマ字は便利ですが、この違いを隠しています。今日知ったことで、日本語の音が全く違って聞こえますよ。
📝 練習シート — 3つの嘘まとめ
問1: 次の単語と正しいIPAを結びつけてください。
- A) すし
- B) ちず
- C) ふじさん
選択肢:[ɸɯdʑisaɴ] / [sɯɕi] / [tɕizɯ]
問2: "Fujisan" のローマ字には F があります。どの嘘に関係しますか?
問3: 英語話者が「tunami」ではなく「sunami」と言うのはなぜですか?
問4: 「し」「ち」「ひ」に共通することは何ですか?
問5: 次の音を分類してください。破擦音、摩擦音、単純な破裂音のどれですか?
- A) た [t]
- B) ち [tɕ]
- C) し [ɕ]
- D) つ [ts]
- E) ふ [ɸ]
問6: IPA記号を埋めてください。
- し = [__i]
- ち = [t__i]
- つ = [t__ɯ]
- ふ = [__ɯ]
- ひ = [__i]
▶️ 動画を見る
この記事はポイントをまとめていますが、実際の音を聞くともっとわかります。
💬 CC(字幕)をオンにしてください。英語・スペイン語の字幕もあります。
🎓 もっと勉強したい皆さんへ
この記事で、日本語の隠れた音を学びました。でも発音は、読むだけでは足りません。実際に声に出して、先生にフィードバックをもらうことが大事です。
Preply で Keigo のレッスンを受けると、この記事で学んだ音を実際の会話の中で練習できます。
シリーズ: S9 | 言語: JP | トピック: 五十音表の嘘 | Slug: gojuon-lies